春爛漫、桜が美しい季節となりました。
今年のお花見は文字通り、散歩の一環で桜を楽しみ、花見の会で集うことは
コロナ終息後のお楽しみになりそうです。
今年度は、コロナに始まり、コロナで幕を閉じることになりました。
初めてのコロナ禍のため、暗中模索で学生さんの学習環境を整えることを検討する機会が多く、
最終的には、学内では感染症対策を行いながらの対面授業やWEB授業が充実して、
同じ業界の研修会も初めてWebで行われることになりました。
受験生の皆様への作業療法について対面の説明会が十分に開催できませんでしたため、
少しでも作業療法に関する理解を深めて頂けるようにと本ブログも定期的に発信することになりました。
人間の歴史を振り返りましても、社会では、困難な状況に遭遇した時には、
困難を乗り越えて医学や科学や文化が発展することがございます。
実は「作業療法」という仕事もそうです。
ある時代は、精神障碍者の方への権利の回復、
またある時代には、戦争後の戦傷者の社会復帰に向けて、
そしてある時は結核を患った方への心身の回復や社会復帰を実現していくことで発展して参りました。
今回のブログでは、私が病院に勤務しておりました時に実際に出会った患者様について
どのような支援を行ってきたかを具体的に3名の方の実践例を通してご紹介したいと思います。
まずお一人目は、生後間もない3カ月健診で障害児かもしれないと医師から言われた親子が
作業療法士に支援を求めてこられた事例です。
親御さんはお子様が障害児と言われただけで、目の前が真黒になってしまい、
時間が止まってしまう感覚に陥ってしまわれました。
そのため、作業療法士としては、まず親子の普段の生活の流れに沿って、寝かし方や抱き方、
おむつの替え方、ミルクの飲ませ方、あやし方、声のかけ方、玩具の選び方や遊び方などの中から
今、生活される場面で困っておられることをお聞きして目の前でお子様に行ってみてから
親御さんにも実際に練習して頂きました。
それを家庭でも実践して頂き、わからないところを次の作業療法場面で親御さんに確認した上で、
うまく行かなかったところを指導いたします。
それを繰り返しながら次第に、お母さんからお子様は寝ていて辛そうだったが、
ぐっすりと眠れるようになったとか、ミルクをたくさん飲めるようになったとか、
一緒に遊んでいると笑うようになったなどの細やかな成長を嬉しそうに報告されるようになって参りました。
そして、そのような支援を繰り返しながら親御さんはご自分のお子様の育児では自信をもちながら
育てていかれるようになられました。
作業療法士の仕事は、生活での具体的な支援を行うことでお子様とご家族を繋ぐ架け橋となります。
その後はその親御さんは障害のあるわが子を「希望の光」と言われ、他の障害児の親御さんの相談を
快く受けておられました。
次に、脳梗塞を発症され右片麻痺になられて事務的なお仕事ができなくなられたという50代の方の
就労支援の事例です。
発症される前は右利きでしたが、作業療法プログラムで利き手交換をして、
左手で書字動作やPC操作を練習して頂き、報告書の作成や片手でのホッチキス止め、
書類を各部署に届けるなどを作業療法プログラムで練習して頂き、無事に現職復帰されました。
最後にご紹介する方は、70代の主婦の方が、地域でのサークル活動、
特にゲートボールを地域の主婦の方と共に楽しみにされておられましたが、
ある日突然に脳出血のため左上下肢が麻痺となり不自由になられましたために、
もう地域のお仲間とゲートボールはできないと元気をなくされておられました。
まずは手始めに作業療法プログラムとしてトイレ動作や入浴動作の自立に向けてのプログラムから
練習しておりました。
丁度その自立プログラムの目標が達成される頃に、お仲間が3名見学に来られて
作業療法では立位での両手動作の練習中にゲートボールスティックでボールを打つ練習プログラムを
見ていただきましたところお仲間が、「ここまで良くなっているからゲートボールを一緒にできるわよ」と
励まして下さり、その後はお仲間とゲートボールを楽しむことを目標にされて頑張られ、
退院された後もお仲間の支援を受けながらゲートボールを楽しめるまでに良くなられました。
作業療法士は趣味活動を通して対象者とお友達との懸け橋となります。
このように作業療法士の仕事は病気や障害を持たれましても、社会復帰や趣味を実現したいという
対象者の思いを可能とする支援を行うことができます。
チームメンバーの他職種の方に「作業療法は障害や病気の方の夢を実現する仕事ですね」と言われたことが
ありますが、良く仕事内容を理解して下さっているなあと嬉しく思ったことがあります。
対象者が夢を実現され、対象者やご家族と至福の喜びを感じられる時、この仕事に就いて良かったと思える瞬間です。
作業療法は、病気や障害を持った方が社会の中で自分らしさを生かして、社会で役に立ちたいと思われるように
その方と社会を繋ぎながらやりがいを感じる作業を提供するお仕事なのです。
皆様も、このような支援ができる作業療法を体験してみませんか?
次年度も多くの体験の場を用意しておりますので社会医学技術学院にどうぞお越しくださいませ。
お待ちしております。
中村 伴子
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