本学院の作業療法学科学科長である河野達哉先生にインタビューをしました。先生は精神障害領域の作業療法士としてキャリアを生かして、日々の授業にも様々な工夫を凝らして授業をされています。
Q:本日、皆さんにご紹介するのは作業療法学科 学科長の河野達哉先生です。
河野先生:よろしくお願いします。
Q:河野先生はどんな科目をご担当ですか?
河野先生:専門は精神障害領域の科目を担当しています。
Q:作業療法士としてこれまでにどのような障害をお持ちの方を支援してきましたか?
河野先生:就職した当時は入院患者さんがメインで7~8割程度は統合失調症の方でした。以前は精神分裂病といっていましたが2000年に統合失調症と言うようになりました。
外来にはうつ病、気分障害の方や脅迫症の障害の方や摂食障害の方など様々でした。
Q:精神科の病気については授業で教えてもらえますか?
河野先生:精神医学概論から始まります。私が担当しています。
シバタ:最近耳にすることの多い「統合失調症」という病気について教えてください。
河野先生:精神機能の統合がうまくいかなくなる病気です。
精神機能とはものごとを考える、感じる、思うなどの機能が自分の意思にそぐわない状態になる病気で、考えがまとまらない、予期しない言葉が聞こえる、怖いものが見える等、精神がコントロールできない状態になります。
Q:症状により患者さんはどのような状態になってしまいますか?
河野先生:人と接するのが怖くなり家に閉じこもってしまいます。興奮状態で、心の中に葛藤がある状態です。人の視線が怖くなったりもします。
Q:患者さんの大変さをどのように理解していくのですか?
河野先生:静かな環境で面接します。現状をゆっくり聞きます。作業を通してこころを落ち着かせながら、話を聞いていきます。
慣れてきたら書いたり、物を作ったりしてもらって検査のようなこともします。
Q:面接や観察の練習をする授業もありますか?
河野先生:評価学系の授業で基礎から学べます。授業でセラピスト役や患者さん役を演じてもらって練習します。
Q:精神科作業療法の治療について教えてください。
河野先生:薬物療法が前提です。服薬ができているか、症状に左右されないか注意しなくてはいけません。
入院したては頭が興奮している状態だから、集中しにくいので落ち着いた環境で人の状態にあった作業を提供します。環境設定と作業活動の提供が治療の入口です。
Q:作業の提供の仕方や環境設定についても学べますか?
河野先生:作業活動をどう分析して提供するかは作業そのものを勉強する授業、基礎作業学という授業などで学べます。
Q:精神科作業療法の魅力を教えてください。
河野先生:不安定な患者さんが作業療法に来て作業活動をしながら徐々に変わってゆく子を見たとき、例えば花の塗り絵で単色しか使っていなかった患者さんがいろんな色が使えるようになったり、ほかの患者さんの作品を見て「こんな色の使い方もいいですねと」気が付けるようになったりしたときに喜びを感じます。
入院時はとても疲弊していた患者さんが、退院するときにははすごく元気になって「ありがとうございました」と言ってくれた時や外来で来院した時に元気な様子を見せてくれる時に喜びを感じます。
Q:精神科作業療法士にはどんな人が向いて向いていますか?
河野先生:人の話をじっくり聞ける人。共感できたり、自分と違った価値観の人の話を受け止められる人。自分の価値観を押し付けないでいられるように気づける人だといいですね。
Q:相手の方の価値観を受け止められるようになるのは難しそうですね。
河野先生:面接の練習の中で予期しない言葉を言われた時など、模擬場面を作って練習します。
Q:河野先生が教員として大切にしていることは何ですか?
河野先生:公平公正であること。皆等しく教育を受ける権利があるということを大切にしてゆきたいと思っています。
学生さんの興味がない部分にも面白そうだなと思ってもらえるような仕掛けをたくさん作りたいと思っています。質問の仕方や質問しやすい場の設定等、自主性を引き出す仕掛けを大切にしています。
Q:作業療法の仕事に関心を持ってくださった方に一言お願いします。
河野先生: 誰かのために役立ちたいという思いはとても尊いと思います。その想いを持っていること自体が素晴らしいと思います。
今皆さんはどういった職種があるのか探していると思いますが、作業療法という職種は多様性があり奥行きが広いです。自分自身の多様性が活かせる、自分自身の興味関心が活かせるユニークな医療職です。
関心を持っていただけたら作業療法という仕事の門戸を是非たたいていただきたいです。仕事を通して、自己実現をしていただきたいと思っています。
Q:河野先生、本日はありがとうございました!
⇒YouTubeにてインタビュー動画をご覧いただけます
カテゴリー
月別アーカイブ