本学院の作業療法学科教員の木下輝先生。作業療法学科の授業では主に身体障害分野を担当されています。そんな木下先生に、これまでの経歴や作業療法士の魅力ややりがいなどについてインタビューをしました。
Q:本日、皆さんにご紹介するのは作業療法学科の木下輝先生です 。先生、本日はよろしくお願いします。
木下先生:よろしくお願いします 。
Q:早速ですが、木下先生はこれまでどんな病院で働いてきましたか 。
木下先生:資格を取ってすぐはリハビリテーション病院で5年ほど働いていました。そのあとは急性期病棟、回復期病棟、高齢者施設が一体となっている病院に 2年ほど勤務しました。
【編集部注】
*急性期病院:病気や怪我をした直後の治療をする病院(救急病院)
*回復期病棟:病気や怪我の状態が落ち着きリハビリをメインに行う病棟 。リハビリテーション病院は病院全体が回復期病棟 。
*高齢者施設:自宅での生活が難しい高齢者が暮らす施設または自宅への生活復帰に向けリハビリを行う施設
Q:木下先生は本学院の作業療法学科ではどんな科目を担当していますか?
木下先生:主には、
作業療法で患者さんに行うアクティビティを経験してもらう「基礎作業学」
高齢者向けの作業療法の知識や実践方法を学ぶ「高齢期作業治療学」
家に帰るために自宅の環境を整える方法を学ぶ「生活環境支援作業療法学」
などを担当しています 。
Q:これまでに、どんな病気の方を治療してきましたか?
木下先生:一番多いのは脳卒中です。それ以外に骨折や、数は多くないですが神経難病のALSやギランバレーといった、徐々に手足が動かなくなってしまう難病の方も診ていました。
Q:社会医学技術学院の作業療法学科(専門学校)ではどんな内容を学んでいくのですか?
木下先生:1年生の基礎医学で解剖学・生理学 、2年生では病理学や臨床神経学や整形外科学などの授業が続きます 。
Q:リハビリテーションとかかわりの深い「脳卒中」という病気について教えてください。
木下先生:脳卒中は人間の体の動きをつかさどる脳の血管が詰まったり破けて しまう病気です。しゃべったり理解したり見たりすることなど 様々な障害が起こります。
一番わかりやすいのはある日突然病気をきっかけに、左右どちらかの手足が動かなくなってしまうことだと思います。
Q:脳卒中になると生活にどんな困りごとが生じますか?
木下先生:脳卒中は日本人の死因で第4位、寝たきりの原因では第1位の病気です 。手足が動かないことで普段の生活の全般が行えなくなってしまいます。
Q:患者さまの生活上の困りごとは、どのように知っていくのですか ?
木下先生:生活のどの部分に困難さを抱えているか 、丁寧に聞き取ることから始めます 。
今までどのように生活してきて、これからどう生活していきたいか 、今どういうふうに体の部分に困っていてどのようにでないかを聞き取るところから入ります 。
行為を行うための実行機能といわれる能力や手足の運動機能も観察や分析をします。
Q:では、そうした患者さまの生活上の困りごとをどのように解決するのですか ?
木下先生:解決方法はさまざまです。まずは医学的知識をもとに病気の状態と照らし合わせ、患者さんの実行機能や運動機能がどの程度回復するか評価します 。
評価結果と照らし合わせながら、回復しない部分はどういう道具を使うか、方法をどう工夫すればできるようになるかを考え、具体的な方法を患者さんに提案します 。
具体的には 、例えば家事動作の料理では左手だけで行うための練習や、車の運転を左手だけで行う練習をします。
Q:生活動作のリハビリテーションを行うのですね。良かったら、印象に残っている患者さまのエピソードを教えていただけますか?
木下先生:以前、右片麻痺の女性の患者さんから「普段は介護士さんに髪を結ってもらっているんだけど、本当は自分で結えたらいいんだよね」といわれた経験があります 。
介護士さんに結んでもらってはいたものの「本当はこういう結び方がいいとかこのくらいのきつさがいいとか」要望があったのかなと思いました。
本人からの要望をもとに左手だけで髪を結ぶにはどういう道具があるのか調べて、ある程度分かった時点でその方の求めるきつさや形を実現できるように大きさや形状を工夫して提供した経験があります。
その方は最終的に髪が結えるようになりましたが 、髪が縛れるようになったら、今度は「化粧がやってみたい」「実は病院のパジャマでなくてあ の服が着たいんだ」など、自分の好みの服装や化粧を求めはじめました 。
そういった練習をして退院をしたんですが、退院してしばらくして患者さまが遊びに来てくれたことがあったのですが、その時に、入院中の様子とは見違えるような一瞬「誰かな?」と思うような見た目で遊びに来てくれました。
私が支援したのは最初の髪を結ぶ行為だったんですが、本人ができなくて困っていた 些細な困りごとが解決できたという経験が 「次のこともできるようになるんじゃないか」 「その次のこともやりたい」と派生していった、そんな経験がありました 。
Q:それは嬉しいですね。それでは、作業療法の魅力を教えてください 。
木下先生:一番の魅力は「病気や障害があってもその人らしく暮らせる」「病気や障害があってもより豊かな暮らしを目指すことができる」「そういったサポートができる」というところだと思います 。
Q:木下先生は、どんな人が作業療法士に向いていると思いますか?
木下先生:作業療法士は患者さまの生活に関わる仕事なので、人の暮らしや生活に興味があること、生活を楽しむこと、そのためにはどうしたらいいかということに興味がある方が向いていると思います。
Q:作業療法学科の教員として、大切にしていることを教えてください。
木下先生:教育は作業療法の延長線上にあるものだと思っているので、作業療法士的目線で学生にかかわっています 。一番大切にしているのは学ぶことや知識を使う体験を楽しんでもらえたらいいなと思って工夫をしています。
Q:最後に、作業療法士を目指している皆さんにメッセージをお願いします!
木下先生:専門学校の教育は自分から疑問をもって学びます。自分から興味をもって学ぶということは 初めは難しい体験かと思いますが、普段から些細な事や日常のことに「なんでだろう」と興味や疑問を持つ練習をしてもらえれば いいんじゃないかなと思います。
そういった疑問をもって社会医学技術学院の作業療法学科に入学していただけたら、疑問を解決できるようなアドバイスができたら一緒に学んでいけたらいいかなと思います。
Q:木下先生、本日はありがとうございました !
⇒YouTubeにてインタビュー動画をご覧いただけます。
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