理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得するメリットとデメリット

セラピストとして患者様のお役に立ちたいと考える方の中には、身体機能のスペシャリストである理学療法士と、心とからだのスペシャリストである作業療法士のダブルライセンスを取得して、より幅広い領域で対応できるようになりたいという方もいらっしゃるかもしれません。

 

本学院(専門学校社会医学技術学院)に来校される高校生や社会人の方から「理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取る人はいますか?」というご質問をいただく事もあります。

 

そこでこの記事では、理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得するメリットとデメリット、そして理学療法士と作業療法士がスキルアップのための関連資格を紹介いたします。

 

 

理学療法士と作業療法士のダブルライセンスは取得できる


 

 

まず、そもそも理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得することができるのかという事ですが、これは取得可能です。実際に臨床現場では理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得している人も活躍しています。

 

身体機能のスペシャリストである理学療法士と、心とからだのスペシャリストである作業療法士の幅広い知識や技術を身につける事で、様々な領域で活躍できるようになるでしょう。

 

 

理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得するメリット


理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得するメリットとしては、両方の視点から患者さまにアプローチができること、幅広い知識が得られることなどが挙げられ、自身のスキルアップという意味でのメリットは大きいです。

 

そして、「理学療法士や作業療法士のスペシャリスト」として認められる為、資格を活かしてご自身の希望する分野へのステップアップを目指すための就職や転職の際には大いにアピールできるでしょう。

 

ただし、理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得している人は決して多くないのが現状で、その理由は以下のことが挙げられます。

 

 

理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得している人が少ない理由


理学療法士と作業療法士ダブルライセンスを取得している人が少ない理由のひとつは、給与面で大きな違いが出にくいことがあります。

 

せっかく高い学費と時間を使って、理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得しても、リハビリテーションの単位(点数)には反映されないため、給与面には直接的に反映されにくいのが現状です。ただし、施設によっては資格手当等が用意されている場合もあります。

 

また、実際の臨床では、理学療法士が応用動作訓練などのリハビリテーションができますし、逆に作業療法士が歩行訓練などの身体機能回復のリハビリテーションを行うこともできるので、臨床現場においてダブルライセンスの必要性はそれほど高くないのかもしれません。

 

 

理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得する方法


理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得するには、まず先に理学療法士か作業療法士のどちらかの資格の養成校で国家試験の受験資格を得て、国家試験に合格することで、資格を取得します。

 

その後、もう一方の資格を取得することになるのですが、養成校での共通科目は免除となり、2年間の学習期間で取得することが可能です。(一つ目の資格取得には3年間または4年間の学習期間が必要)

 

 

理学療法士・作業療法士としてスキルアップを目指す方法


 

 

一般的には、理学療法士や作業療法士として活躍されている方は、ダブルライセンスを取得するのではなく、それぞれの資格の専門分野を強みにしたり、関連する別の資格を取得したりしてスキルアップを図っている方が多いです。

 

以下に、例として理学療法士と作業療法士のスキルアップのための関連資格等を紹介いたします。

 

★認定理学療法士

 

登録理学療法士の履修プログラムが終了し、日本理学療法士協会主催のプログラムと指定される教育機関が実施するプログラムを受講し、研修会などへの参加を持って申請条件を満たします。申請が受理され、認定試験に合格することで認定理学療法士の資格を得ることができます。認定理学療法士の資格を保持するためには、5年ごとの更新が必要となります。

参考:静岡県理学療法士協会

 

 

★専門理学療法士

 

登録理学療法士への登録後、日本理学療法士協会が指定する研修を履修し、各種学会参加や発表を行い、論文を執筆することで申請条件を満たすことができます。その後、口頭試験を通過することで、専門理学療法士の資格を取得することができます。こちらの資格も5年ごとの更新が必要です。

参考:静岡県理学療法士協会

 

 

★認定作業療法士

 

認定作業療法士とは、作業療法の「実践能力(技術力・指導能力)」「研究活動」「管理運営能力」が、一定水準以上あると認定された作業療法士のスペシャリストに与えられる資格です。日本作業療法士協会が作業療法士の質を高めるため、生涯学習の一環として2004年に資格制度を開始しました。

参考:日本作業療法士協会

 

 

★専門作業療法士

 

専門作業療法士制度は、認定作業療法士である者のうち、特定の専門作業療法分野において「高度かつ専門的な作業療法実践能力」を有する者を専門作業療法士として認定することとしています。専門作業療法士とは作業療法の中のある分野をより深く知り、その分野における高度な課題解決能力を有する人たちです。

参考:日本作業療法士協会

 

 

★認知症ケア専門士

 

「認知症ケア専門士」とは認知症ケアに対する優れた学識と高度の技能、および倫理観を備えた専門技術士を養成し, わが国における認知症ケア技術の向上ならびに保健・福祉に貢献することを目的として設立された 一般社団法人日本認知症ケア学会認定の資格です。

参考:認知症ケア専門士

 

 

★福祉住環境コーディネーター

 

福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障がい者に対して住みやすい住環境を提案するアドバイザーです。 医療・福祉・建築について体系的で幅広い知識を身につけ、各種の専門職と連携をとりながらクライアントに適切な住宅改修プランを提示します。また福祉用具や諸施策情報などについてもアドバイスします。

参考:東京都商工会議所

 

 

★NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

 

CPTは「NSCA」が認定している資格です。『Certified Personal Trainer』の略語で「認定パーソナルトレーナー」という意味になります。NSCA-CPTは、アスリートだけでなく、幅広い年齢・性別・経験値に合わせたトレーニング指導ができ、トレーニングの指導技術に加えて医学や運動生理学といった専門知識が必要です。

参考:NSCA-Japan

 

 

★CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)

 

「CSCS」はNSCAが管理する認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(Certified Strength and Conditioning Specialist)の事です。ストレングスは筋肉が発揮するパワー、コンディショニングは身体がパフォーマンスを発揮できる状態を意味していて、アスリートやスポーツチームへの障害予防およびスポーツパフォーマンス向上の指導を行う知識やスキルを認定する資格です。NSCA-CPTの上位資格に位置づけられ、より専門性の高い知識やスキルが求められます。

参考:NSCA-Japan

 

 

★JSPO-AT(アスレティックトレーナー)

 

JSPO-AT(アスレティックトレーナー)は競技者の健康管理、外傷・障害予防、スポーツ外傷・障害の救急処置、アスレチックリハビリテーション、体力トレーニング及びコンディショニングなどを行うため、「公益財団法人 日本スポーツ協会(JSPO)」が認定した民間資格です。

参考:JSPO

 

 

★健康運動指導士

 

健康運動指導士は、個々人の心身の状態に応じた、安全で効果的な運動を実施するための運動プログラム作成及び、実践指導計画の調整などを行う役割を担う目的で「公益財団法人 健康・体力づくり事業財団」が制定した認定資格です。

参考:健康・体力づくり事業財団

 

 

★介護支援専門員(ケアマネジャー)

 

介護支援専門員(ケアマネージャー)は、介護保険法に位置付けられた職種であり、介護保険の根幹である「ケアマネジメント」を担う更新性の国家資格です。利用者の希望や心身状態を考慮し、適切なサービスが受けられるようにケアプラン作成や関係機関との連絡調整を行うことが主な業務で、作業療法士として介護保険の知識やケアマネジメント能力を培うためにおすすめの資格です。

参考:介護支援専門員協会

 

 

理学療法士と作業療法士のダブルライセンスについてのまとめ


この記事では、理学療法士と作業療法士のダブルライセンスを取得することのメリットやデメリットについて紹介しました。幅広い知識や技術を身につけて、さまざまな疾患に対応できるセラピストになりたいと考えている方は、理学療法士と作業療法士のダブルライセンスの取得を考えてみるのはいかがでしょうか。あるいは理学療法士または作業療法士としての専門性を高めていくのも良いのではないでしょうか。