理学療法士とスポーツ(アスレチック)トレーナーの違い。どっちを目指したらいい?
理学療法士(Physical Therapist)を目指す方の多くが、ご自身のスポーツ中の怪我でリハビリテーションを受けたことがきっかけになっています。スポーツに関わる仕事としては、理学療法士の他にも「スポーツトレーナー(アスレチックトレーナー)」などがあります。どちらも身体の健康とパフォーマンス向上をサポートする専門職ではありますが、その役割や、業務範囲、資格を取得するために学ぶ内容にはたくさんの違いがあります。
この記事では、理学療法士とスポーツトレーナー(アスレチックトレーナー)の役割、学ぶ内容、活躍するシーンなど、2つの職業の違いやそれぞれの特徴を詳しく解説いたします。
この記事をご覧になると、どんな人が理学療法士またはスポーツトレーナー(アスレチックトレーナー)に向いているのかがわかるので、本当にやりたいのはどちらの職業なのか考えるときに、ぜひ参考にしてください。
注)スポーツトレーナーは、トレーニング指導やけがの予防、応急処置やリハビリテーション、そしてコンディショニングなどを行い、アスレティックトレーナーはそれらに加えてけがや痛みの回復などの医療的なケアを行うという違いはありますが、この記事では広義でスポーツトレーナーとしています。
理学療法士とスポーツトレーナーの役割の違い
理学療法士の役割と特徴
理学療法士は、主に医療機関で働き、患者様のリハビリテーションを担当します。理学療法士の主な役割は、病気や怪我からの回復を支援し、患者様が最大限の機能を回復するのを助けることです。具体的な業務内容には、以下のようなものがあります。
1. 患者様の評価と診断
◎ 身体機能の評価(可動域、筋力、バランスなど)
◎ 痛みの評価
2. 治療計画の作成と実施
◎ 個々に合わせたリハビリプログラムの設計
◎ 運動療法、手技療法、物理療法などの実施
3. 予防と指導
◎ 患者様やその家族への指導
◎ 再発防止のための指導とアドバイス
理学療法士は、医学的な知識と技術を駆使して、患者の生活の質を向上させることを目指しています。また、理学療法士は国家資格を取得する必要があります。
スポーツトレーナーの役割と特徴
一方、スポーツトレーナーは、スポーツ選手やチームのパフォーマンス向上と怪我の予防を主な業務としています。スポーツトレーナーの具体的な役割には、以下のようなものがあります。
1. トレーニングとコンディショニング
◎ 選手の体力や技術向上を目的としたトレーニングプログラムの設計
◎ ウェイトトレーニング、柔軟性トレーニング、持久力トレーニングなど
2. 怪我の予防とケア
◎ 怪我のリスクを減らすための対策(ウォームアップ、ストレッチングなど)
◎ 怪我の応急処置やリハビリのサポート
3. 試合や練習でのサポート
◎ 試合前の準備や試合中のケア
◎ 怪我が発生した際の即時対応
スポーツトレーナーは、スポーツ医学や運動生理学に精通しており、選手の身体的なパフォーマンスを最大限に引き出すことを目指しています。スポーツトレーナーも専門学校や大学で専門知識を学んでいますが、必ずしも国家資格を取得していなければ活動できないというわけではありません。ただし周りから認められ活躍するためにはアスレチックトレーナーの資格を取得しておくと良いでしょう。
理学療法士とスポーツトレーナーの学習内容の違い
理学療法士とスポーツトレーナーを目指す学生が大学や専門学校で学ぶ内容には、それぞれの職務に直結した専門知識と技術が含まれています。
理学療法士は、主に医療やリハビリテーションに関連する幅広い医学的知識と臨床スキルを学びます。一方、スポーツトレーナーは、運動科学やスポーツ医学に特化した知識と実践的なトレーニング技術を習得します。両者の学びの内容は、その職務の専門性に応じた異なるカリキュラムで構成されているため、各分野でのエキスパートとしての能力を高めることができます。
以下に、それぞれの学習内容を具体的に紹介します。
理学療法士になるための学習内容
理学療法士になるための教育課程は、主に以下のような内容を含みます。
1. 基礎医学(一例)
◎ 解剖学
◎ 生理学
◎ 病理学
◎ 薬理学
2. 臨床理学療法(一例)
◎ 運動療法
◎ 徒手療法
◎ 物理療法(電気治療、温熱療法など)
◎ 神経理学療法
3. リハビリテーション医学(一例)
◎ 痛みの管理
◎ 高齢者リハビリテーション
◎ 小児リハビリテーション
◎ スポーツリハビリテーション
4. 臨床実習
◎ 病院やリハビリテーション施設での実地研修
◎ 患者との接触を通じた実践的なスキルの習得
5.研究と倫理
◎ 医療倫理
◎ 論文作成と発表
理学療法士の教育プログラムは、3年間以上の専門学校または4年制大学の課程で構成され、卒業後には国家試験に合格することが求められます。
スポーツトレーナーになるための学習内容
スポーツトレーナーになるための教育課程は、以下のような内容を含みます。
1. 運動科学(一例)
◎ 運動生理学
◎ 運動解剖学
◎ 生体力学
2. スポーツ医学(一例)
◎ スポーツ外傷とその治療
◎ リハビリテーション
◎ 栄養学とスポーツパフォーマンス
3. トレーニングとコンディショニング(一例)
◎ トレーニングプログラムの設計と実施
◎ ウェイトトレーニング
◎ 持久力トレーニング
4. 応急処置と救急対応
◎ 怪我の応急処置
◎ 心肺蘇生法(CPR)
◎ 救急対応の基礎
5.実習とフィールドワーク
◎ スポーツチームやフィットネスクラブでの実地研修
◎ トレーナーとしての現場経験の積み重ね
スポーツトレーナーの教育プログラムは、2~4年の専門学校や大学課程で提供されています。
理学療法士とスポーツトレーナーの資格の違い
理学療法士とスポーツトレーナーのそれぞれの資格を取得する流れについては、それぞれ以下のような違いがあります。
理学療法士の資格
理学療法士(PT)になるためには、3年間以上の専門学校または大学での学び、国家資格を受験し合格することで資格を取得することができます。
スポーツトレーナーの資格
スポーツトレーナー(アスレチックトレーナー)になるためには、2年間以上の専門学校または大学で指定されたカリキュラムを修了し、認定資格を受験し合格する必要があります。
理学療法士とスポーツトレーナーの給与の違い
理学療法士の給与
理学療法士の給与は、医師の指導の下でリハビリテーションを行うため、医療機関に所属することが多く、地域や勤務先によって異なりますが一般的に給与は安定しています。
初任給はおおよそ月額25万~30万円程度となっており、経験を積むとともに、専門性や管理職への昇進により給料が上昇します。高度な専門技術や資格を持つ認定理学療法士、さらに高い収入を得ることが可能です。
スポーツトレーナーの給与
スポーツトレーナーの給与は、理学療法士と比較するとやや低めの傾向があります。
初任給はおおよそ月額20万~25万円程度で、さまざまな経験を積むことで、プロスポーツチームや大学のアスレティックプログラムでのポジションを得ると、高い収入を得ることができる可能性があります。
理学療法士は、医療におけるリハビリテーションの専門家として国家資格が必要であり、給料も比較的高い傾向にあります。一方、スポーツトレーナーは、スポーツ現場でのパフォーマンス向上と怪我予防に特化した専門職で、認定資格を取得する必要がありますが、給料は理学療法士に比べてやや低いことが一般的です。
アスレチックトレーナーが理学療法士の資格を取得するメリット
専門学校社会医学技術学院には、すでにアスレチックトレーナーの資格を持ち(またはスポーツトレーナーとして)活躍している方が、さらなるステップアップとして、理学療法士の資格取得を目指す方が少なくありません。
アスレチックトレーナーが理学療法士の資格を取得することには、以下のようなメリットがあります。
1. キャリアの幅が広がる
両方の資格を持つことで、より多様な職務に就くことができるようになります。
◎ 医療機関での勤務:理学療法士として、病院やリハビリテーション施設での勤務が可能になります。
◎ スポーツ現場でのリハビリテーション:スポーツチームやフィットネスクラブで、トレーナーとしての経験を活かしながら、理学療法士としてのリハビリテーションも行えるようになります。
◎ 教育機関での指導:大学や専門学校で、理学療法やスポーツトレーニングの両方を教えることができます。
2. 収入の向上
理学療法士の資格を取得することで、収入が上がる可能性があります。
◎ 高い給与水準:理学療法士の平均給与は、スポーツトレーナーよりも高い傾向にあります。
◎ ダブル資格による付加価値:雇用主にとって魅力的な人材となり、高い報酬を得る機会が増えます。
3. 専門知識とスキルの向上
幅広い知識と技術を習得することで、より包括的なケアを提供できるようになります。
◎ 多角的なアプローチ:スポーツ傷害の予防と治療だけでなく、慢性疾患や高齢者のリハビリテーションなど、様々なケースの患者様に対応できるようになります。
◎ 最新の医療技術と研究:理学療法士としての教育を通じて、最新の医療技術や研究に携わるチャンスが増えます。
5. 専門的なネットワークの拡大
理学療法士の資格を持つことで、専門的なネットワークが広げることが可能になります。
◎ 学会や研修会への参加:理学療法士向けの学会や研修会に参加し、最新の情報や技術を学ぶ機会が増えます。
◎ 専門家との交流:医師や他の理学療法士、リハビリテーション専門家とのネットワーキングが可能になり、情報交換や協力がしやすくなります。
アスレチックトレーナーが理学療法士の資格を取得することは、キャリアの幅を広げ、収入を向上させ、専門知識とスキルを向上させるための有効なステップです。これにより、より包括的なケアを提供し、より多くの人々の健康とパフォーマンス向上に貢献することができます。
理学療法士とスポーツトレーナーどちらを目指すべきか?
理学療法士(PT)とアスレチックトレーナー(AT)は、それぞれ異なる役割と職務を持ち、そのために求められるスキルや資質も異なります。どちらの職業を目指すべきかは、あなたの興味やキャリア目標によって変わります。
以下に、それぞれの職業に向いている人の特徴とともに、どちらを目指すべきかをまとめます。
理学療法士(PT)に向いている人
1. 医療現場での勤務に興味がある人
病院やリハビリテーション施設、クリニックでの勤務に興味がある人、様々な疾患や患者様から「ありがとう」と言われることにやりがいを感じる人に適しています。医療知識を深く学びたい、医学的なアプローチで患者様を支援したいという意欲がある人に向いています。
2. 長期的な患者ケアに興味がある人
慢性疾患や怪我からの回復をサポートするため、長期的な治療計画を立てて実施することに興味がある人に向いています。患者様との長期的な関係を築くことが好きな人に適しています。
3. 科学的アプローチが好きな人
解剖学や生理学、運動学など、医学的かつ科学的な知識に基づいたアプローチを好む人に向いています。研究やデータに基づいて問題を解決することが好きな人に適しています。
4. 安定した職を求める人
理学療法士は医療従事者としての安定した職業であり、給与も一般のスポーツトレーナーよりは高い期待できます。
アスレチックトレーナー(AT)に向いている人
1. スポーツ現場での活動が好きな人
スポーツチームやアスリートと密接に関わりながら、彼らのパフォーマンス向上や怪我の予防に取り組むことが好きな人に適しています。スポーツイベントやトレーニングキャンプなど、ダイナミックな現場で働きたいという人に向いています。
2. 急性期の怪我対応が得意な人
試合やトレーニング中に発生する急性の怪我に迅速に対応するスキルが求められます。応急処置や救急対応に興味がある人に適しています。
3. 運動とフィットネスに情熱がある人
運動生理学やトレーニングプログラムの設計に興味がある人に向いています。自身もアクティブで、フィットネスやスポーツを楽しむ人に適しています。
4. 柔軟なキャリアを求める人
スポーツトレーナーは、フィットネスクラブやスポーツチーム、個人トレーナーとしての働き方も可能で、柔軟なキャリアを築くことができます。
理学療法士を目指すべき人は、医療現場で働きたい、科学的な知識を活かして患者さまと長期的なケアに携わりたい、安定した高収入の職業を求める人です。
アスレチックトレーナーを目指すべき人は、スポーツやフィットネスに情熱があり、スポーツ現場でアスリートのパフォーマンス向上や怪我の予防に携わりたい、ダイナミックで柔軟なキャリアを求める人です。
最終的には、あなたの興味や目標に最も合致する道を選ぶことが重要です。どちらの職業も、専門知識とスキルを活かして多くの人々の健康とパフォーマンス向上に貢献できる素晴らしい職業です。
理学療法士とスポーツトレーナーの違いのまとめ
理学療法士(PT)とスポーツトレーナー(AT)は、健康と運動に関わる重要な専門職ですが、その役割と働く場所は異なります。理学療法士は医療機関で患者のリハビリを担当し、病気や怪我からの回復を支援するのに対して、スポーツトレーナーはスポーツ現場でアスリートのパフォーマンス向上や怪我の予防に努めます。
理学療法士は安定して長く働くことができ、長期的に患者様とのケアを通じて深い信頼関係を築けるのもおおきな魅力の一つです。医療知識を深く学び、多くの人々の健康をサポートする喜びを感じたい方には、理学療法士の道がおすすめです。