理学療法士の仕事内容や今後も必要とされる理由について詳しく解説します
全国に20万人以上の有資格者がいる「理学療法士」。医療・介護・スポーツなど、さまざまな分野で「その人らしい生活」を取り戻すためのサポートをする、とてもやりがいのある職業です。
理学療法士はスポーツの領域に携わっていたり、病院で歩行訓練を行ったりしているイメージが強いのではないかと思いますが、実際にはかなり幅広い領域で活躍しています。
この記事では理学療法士の具体的な仕事内容や、将来性についてわかりやすく解説していきます。
理学療法士とは?
理学療法士とは英語でPT:Physical Therapistと呼ばれる国家資格であり、Physical(身体的な)という言葉の通り、身体機能の低下や怪我、病気などにより身体に障害を持った人の機能回復をサポートする専門家です。
「骨折の手術をしたばかりで、まだ一人で起き上がれない」「脳梗塞により身体の半分に麻痺が出て、うまく歩けない」といった怪我や病気の影響で身体に障害のある方や、「年齢とともに膝が痛くなってきたので、これ以上ひどくならないようにしたい」という方のように障害の進行を予防したい方が対象となります。
このように生活に関わる動作にサポートが必要な方に対して、運動療法・物理療法などのリハビリを行い、基本動作能力(起き上がって座る、立つ、歩くなど)の回復や維持を図るのが、理学療法士の役割です。
つまり「生活を支える基本動作のスペシャリスト」と言えるでしょう
理学療法士が今後も必要とされる理由
団塊の世代が75歳以上となる2025年はすでに間近に迫っており、日本はすでに超高齢化社会に突入していると言えるでしょう。そういった状況の中で、理学療法士の社会的な役割はますます高まってきています。
特にこれまで中心だった医療機関でのリハビリだけでなく、「体力低下を予防するためのリハビリ」や「病気があっても自宅で自分らしく生きるためのリハビリ」といった切り口で理学療法のニーズが高まってくることが予想されます。
その一方では毎年1万人以上の理学療法士が増えているという現状があり、「理学療法士の数が増えすぎている」という意見を持つ人もいます。
しかし理学療法士の数が増えるのと時を同じくして、理学療法士の職域(働く領域)も急速に拡がってきており、医療施設以外の幅広い分野で理学療法士が活躍しています。
また、未来はあらゆる産業でAIやロボットが人間の代わりをするようになる、と言われていますが、人と人が直接やりとりをしながらリハビリを行う理学療法士の仕事は、いくらコンピューター技術が進歩しても代わりにできるものではありません。
理学療法士は今後も社会に求められる存在として活躍が期待できる、将来性のある仕事と言えるでしょう。
理学療法士の仕事内容
ではもう少し具体的に、理学療法士の仕事内容を見ていきましょう。
理学療法士は医師の指示に基づき、リハビリの治療計画を立てて理学療法を行います。具体的な治療としては、主に3つの方法が用いられます。
【運動療法】
運動療法とは「運動することによって低下した運動機能を高める」治療で、患者さんの状態(筋力、全身持久性など)を評価しつつ、快適な運動負担量になるよう調整しながらエクササイズやトレーニングを行います。
- ・関節可動域訓練
- ・筋力トレーニング
- ・バランストレーニング
- ・歩行訓練
- ・有酸素運動
【物理療法】
物理療法とは温熱、寒冷、電気、超音波などの物理的なエネルギーを使用して痛みの緩和や症状の改善を図る治療です。症状に応じて、適切な物理療法機器を選択し治療を進めていきます。
- ・温熱療法:ホットパックなど
- ・寒冷療法:アイシングなど
- ・牽引療法:牽引療法器など
- ・電磁気療法:マイクロウェーブ治療器など
- ・マッサージ療法:メドマーなど
【日常生活動作練習】
身体機能が低下すると「着替える」「お風呂に入る」「トイレに行く」といった日常生活動作に支障が出ることがあります。こうした動作をスムーズにできるよう、理学療法士はサポートしつつその練習を行います。これらの治療を組み合わせて、それぞれの患者さんに合ったオーダーメイドのリハビリを提供し、より快適な生活を送ることができるようにサポートします。
その他にも、必要に応じ住環境の整備や義肢装具に関するアドバイスなどを行うこともあります。
作業療法士との違い
理学療法士と名前がよく似た資格として「作業療法士」がありますが、どのような違いがあるか知っていますか?
作業療法士は英語でOT:Occupational Therapistと呼ばれ、私たちが日常生活の中で行うあらゆる活動=作業を通して身体と心の両面にアプローチ(リハビリ)する専門家です。
理学療法士と同様に国家資格であり、食事や着替えなどの生活するうえで欠かせない動作から精神領域のリハビリまで行います。
理学療法士が座る・立つ・歩くといった基本動作の回復を目指した治療・支援をするのに対して、作業療法士は食事・トイレ・家事といった応用動作の回復を目指す関わり方が多いことが大きな違いといえます。
医療機関で勤務する作業療法士も多いですが、精神面のリハビリも可能であるという特徴を活かし、メンタルクリニックなどの就職も可能です。
理学療法士の主な勤務先(就職先)とは
養成校を卒業し国家試験に合格すると、いよいよ実際に理学療法士として働くことになります。では、理学療法士はどのような場所で働くのでしょうか?
主な就職先と、その特徴をご紹介します。
医療機関
日本理学療法士協会の調査でも、全会員のうち約63%と、もっとも多くの理学療法士が勤務しているのが医療機関です。主な医療機関としては、次のようなものがあります。
【急性期病院】
急な病気で入院したり、手術をした直後の患者さんにリハビリを提供します。全身状態が安定しない方も多く、リスク管理には厳重な注意が必要です。
医療機関以外では関わることの少ない、さまざまな疾患のリハビリを学ぶことができるのが特徴です。
【リハビリテーション病院】
病気や怪我の状態がある程度落ち着いた患者さんが、集中してリハビリするために入院する病院です。他の職場と比べて、一人の患者さんに対してじっくりと時間をかけてリハビリに打ち込むことができます。
【クリニック】
特に整形外科クリニックは、高齢者に限らずスポーツで怪我をした学生やアスリートに関わる機会が多くあります。スポーツ分野で経験を積みたいと考えている理学療法士には、勤務先の選択肢として根強い人気があります。
介護保険関連施設
【老人保健施設】
入所している方の在宅復帰を目指し、リハビリを行います。ご本人の動作能力だけでなく、家屋環境や家族のサポート体制などを総合的に評価し、医師・看護師・ケアマネージャーなど多職種と連携していく能力が求められます。
【通所リハ・訪問リハ】
訪問リハでは、実際に利用者の方の生活の場で理学療法を提供することになります。医療機関でのリハビリと違い、より生活に即したアプローチを学ぶことができます。
福祉施設
身体障害に限らず知的障害、精神障害など、さまざまな障害によりサポートが必要な方が入所している障害者療養施設でも、理学療法士が活躍しています。最近では、障害を持つ子どもの通所施設・入園施設でも理学療法士のニーズが高まっています。
行政・地域
市役所・区役所といった行政施設で理学療法士として勤務することも可能です。リハビリ専門職としてだけでなく、行政の一員として地域を活性化していくことが求められるため、地域保健・福祉・公衆衛生など幅広い見識が求められます。
教育・研究機関
理学療法士養成校や大学、大学院の教員として教育や研究に関わる、というキャリアもあります。
教員になるためには「臨床経験5年以上」という経験が必須になります。また、大学の場合は「修士の学位を有する(=大学院を卒業している)」などの条件があることがほとんどです。
将来的に教育・研究の分野を目指す場合は、臨床経験・学術成果の両方の面で計画的にキャリアアップを図っていく必要があるでしょう。
医療機関(スポーツ分野)
理学療法士の専門性を活かし、フィットネスクラブなどのスポーツ関連施設でトレーナーとして活動する働き方もあります。動作や姿勢を分析できるという特徴を生かし、地域のジムなどで活動する理学療法士が今後さらに増えてくるかもしれません。
また、サッカーや野球などプロスポーツの現場で活躍している理学療法士もいます。理学療法士の持つリハビリとコンディショニングに関する知識・技術を活かして働くことができますが、実際にプロチームに入って働くためには、アスレティックトレーナーなど理学療法士以外の資格取得が必要になる場合もありますので、興味がある方は早いうちから情報収集し計画的にキャリアプランを進めていきましょう。
理学療法士にはどうやったらなれる?
「理学療法士として働いてみたい!」と思ったとしても、試験を受けてすぐになれるわけではありません。理学療法士は国家資格なので、国によって定められた次のような過程をすべてクリアする必要があります。
①養成校で学ぶ
文部科学大臣が指定した養成校(専門学校、短期大学、大学など)で3年以上かけて解剖学・生理学・運動学・リハビリテーション医学など、理学療法士として必須の知識や技術を徹底的に学ぶ必要があります。その中には実際に医療現場に出て勉強する臨床実習もあります。
②国家試験の受験資格を得る
養成校で3年以上学んで決められた課程を修了すると、国家試験の受験資格を得ることができます。
③国家試験に合格する
資格を取得するための最終関門が、厚生労働省が実施する国家試験です。この試験に合格すると、晴れて理学療法士の国家資格を得ることができます。
理学療法士はこんな人に向いている!
理学療法士に向いている性格や必要な能力はどういったものがあるでしょうか。「こんな人は理学療法士向き!」というものを挙げていきます。
・コミュニケーション能力が高い
一対一で患者さんと話す機会が多いため、コミュニケーション能力の有無はとても重要です。うまくコミュニケーションをとって患者さんのモチベーションを高めることで、よりリハビリの成果を上げていくことができます。
・洞察力がある
一つ一つの現象を「点」ではなく俯瞰的に「線」としてつなげて考える洞察力があると、評価・治療の流れに一貫性がある理学療法士として、多くの患者さんの信頼を得ることができるでしょう。
・観察力がある
リスク管理をする上で、患者さんのわずかな変化(表情、筋肉の硬さ、痛みに対する反応など)を見逃さない観察力はとても重要です。何気ない言葉や反応から変化を察知して、身体面や精神面の状態の悪化を防がなければなりません。
・探究心が強い
思った通りにリハビリの成果が出ないこともありますが、あきらめずに「もっとより良いリハビリの方法はないか」などを考えられる探究心が重要です。
・共感力、思いやりがある
痛みや不安な気持ちを訴えてくる患者さんに対して、心から寄り添い思いやることで信頼関係が構築されリハビリをスムーズに進めていくことができます。
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